オリビエートの坂の上

観劇のメモを投げ込む予定です

エピソードゼロ(刀ステ悲伝 初見感想メモ)

※ネタバレ含みます。内容の説明はしてないので、鑑賞後の閲覧推奨。

【8月追記

千秋楽まで見ていろいろ書きたいことができたんですがまだかけてません!とりあえず悲伝大好きでした!!

 

刀ステ悲伝 6/16ソワレ     

物語の内容自体は京都公演もしくは千秋楽ライビュ終わってからまた書きます。とりあえず忘れないうちに感想メモ。書きたいとこだけの箇条書き。    

 

・客席通路疾走

三日月が走り過ぎていって舞台に駆け上がったとき、後ろ姿を見ながら神さまだと思ってしまった。

ほかの刀剣男士も、人間が演じているというにはあまりにも清冽で、あんまりにも美しかったのでしばらく呆然としてしまってて序盤の殺陣付近の記憶がない。 ここですでに半分泣いてた。  

 

・襲撃BGM 

本丸襲撃あたり(うろ覚え)のBGMが概念的にアヴェマリア系(?)だったの、好みです。悲伝らしいというか。

音楽に詳しい人なら曲ネタで気づいたりする仕掛けがあるんだろうなと思ったけど、音楽のおの字も知らないので分からないくやしい…。

 

・出陣の儀

あんなに悲しくてやりきれない出陣の儀ある…???

今回はやらないのかな?と思ったタイミングでのボディブロー。全員が全員、声にも顔にもあからさまには出さなくて、なのにそれぞれ明らかに痛切な雰囲気が出てて泣いた。あんまりだよ…。

カッコイー!!って言われてて刀ステの代名詞だった(?)シーンが…。

いままでの出陣の儀の走馬灯走ってしまってつらい。山姥切……………  

 

・白い三日月

からっぽの月の使いのようであり、みにくい老人のようであり、羽化に失敗したいきもののようだった。

執心が強すぎて業が深すぎて禍々しさすらあって、目をそらしたくなるような感覚が先に立つのにただひたすら美しい。

このかたなが堕ちきってドロドロに穢れることがあってもこの美しさは損なうことができないのではないかと思わされて、ここまでくると三日月の「美しさ」は呪いなんじゃないかという気がした。  

 

・三日月と山姥切

足りなかった………まだ強さが足りなかったんだ…………あんなに三日月ぶん殴れよ!!!!!絶対だぞ信じてるぞ!!!!!!って思ってたのに山姥切…… あんな、なんの力もない子どもみたいな顔で……。

(いや冷静に考えればあの三日月をどうこうできるはずもないんですけど)

下手にいて三日月の表情が見えなかったこともあり、ひたすらどうしようもできない山姥切の顔ばかり記憶に残ってしまった。

三日月が首を振った時、その後ろ姿には諦念と慈愛が見えた気がしたけど、どんな顔をしてたんだろうなぁ。(次回確認したいけど、毎公演同じ顔をしている気がしない) 

 

・エンディング曲

何が辛いって虚伝の勝鬨じゃないですか…廻ってしまった…。

あれっここステアラかな!?!?

でもエンディング、三日月はあの微笑みともつかない顔で微笑んでるだけで、歌わないんですよ。カテコの雰囲気もずっとそのまま、磨り減ったような結いの目の顔。

そういえばカテコの拍手、結構拍手しっぱなしというか止むタイミングってないイメージだったんですけど、ダブルもトリプルも三日月が手を上げたり何かの動作するとすっと止んで、礼をすると一斉に鳴り響いて。 客席みんなが三日月の所作に固唾をのんでるというか、一心に三日月を見てて、それがなんだか縋り付くみたいで、なんとなく静謐さのあるカテコでした。  

 

・玉城さん(小烏丸)

キャラ初出でこの役どころか…!でも小烏丸でなければ務まらない役ですよね。 そしてこの役は力のある人じゃないとできんな…という役に、出来る人をちゃんと持ってきてくれるキャスティングありがとうございます。めちゃくちゃよかったです。うまい。安心。好き。

三日月はどう見えていた?っていう流れに今までの作品名綺麗に入れてくるところ、好きなシーンです。  

 

碓井さん(鵺と呼ばれる)

なんでチケット戦ほぼ終わってからキャスト発表したの!?!?

(そりゃ色々事情があるんだろうけど)

めっちゃ出てるし大事な役じゃないですか…私が碓井さんのファンなら臍噛んでのたうち回るよ… 残りの手持ちチケが電子でさえなければ、泣いてるファンの方探してチケット渡したかった。

叫び声みたいな喚き声みたいな、あの吠え方が好きです。

ところで、三日月の殺陣の形取った時三日月取り込まれたの!?とか思ってめっちゃ動揺したんですけど、取り込まれるも何もあれは義輝の刀の集合体だったんだから、主に振るわれて主を守りたかった三日月がそのうちの一本として彼の中にあってもおかしくないなと(思いつきなので確証なし)。

あと、鵺と呼ばれる、のあとに名詞がないのめちゃくちゃ気になるんですよね。鵺と呼ばれる刀、とか、者、とかなんとでもできたと思うんだけど…。あと序盤、「かたな」という言葉を出すのに必ず詰まってるところが引っかかるのでまた考えます。

 

・前山さん(鶯丸)

声と音程寄せるのすごい!!!!元のお声をしらないんですけどね。立ち姿の姿勢も鶯丸。あと殺陣が清潔で好き。その清潔さからの、終盤で乱暴に敵を掴んで斬り殺すところ、ゾクッとしました。ド下手じゃないと見えないだろうけど、あの時の表情見てみたいな~!ライビュカメラさんよろしくお願いします!(と言いたいところだけど、ライティングと前髪のあれそれがあるのであんまり期待は…)  

 

・鈴木さん(三日月宗近)

この人、またワンツー対決で首を振っているぞ………!!

やめろやめろォ!!!

(どうも豊洲の亡霊です)  (捨天対決を思い出さざるを得ない)

天魔王の後の三日月…!って意気込んで見に行ったんですが、天魔王の後の三日月というより髑髏城の後の鈴木さんの三日月という感じ。

今回印象的なのは、最初から最後までだいたいずっと同じトーンの表情だってことでしょうか。終始茫洋とした、諦めとも慈愛ともとれない顔。本丸の刀剣男士たちと刀で語り合う時の嬉しそうで愛情に溢れた笑顔でさえ、その枠を出ないんですよね。(余談ですが、悲伝でいちばん、というか唯一幸せそうにしてるのが仲間が自分を折りにきたこのシーンだったというのが辛すぎた)

この悲伝の、観たあとにどんな言葉を出していいかわからないあの気持ちは九割方この人の三日月に起因してる気がします。

そしてわざわざ言うまでもないかもしれないですが、鈴木さんの三日月は美しい。このシーンが、とかではなく、存在が美しい。美しくて怖くて強い。この三日月だからのこのストーリーなのか、このストーリーだからこそのこの三日月なのか…。  

 

それにしてもパンフの「今回のポイントは顕現セリフ」っていうの、何のことか全く分からなくてあまりに悔しい。私だって三日月めちゃくちゃ好きだからね!?!?鈴木さんがとんでもなく三日月のこと考えて愛情を注いでいるのは存じている(と思う)けども、私だって好きだから!!役者さんが分かってて私にわからないのは悔しい!! ということで頑張って考えます(SFものとかループものの考察苦手です)。  

 

 

  雑感メモは以上です。 ここからは肯定的じゃないことも込みのボヤキなのでご注意ください!        

 

 

 

京都劇場について

舞台の横幅めっちゃ狭くて驚きました。 このご時世、箱にどうこういえる状況じゃないんだろうけどあれだけ殺陣詰め込むならもうちょい舞台の広さは要るのでは…と思ったり。

 

それはともかく、あの狭い通路を何回も疾走して、あの子どものつま先くらいしか乗らないような段差をあのスピードで駆け上がるの危なくないか!?!? キャストさんみんな、全くそれを感じさせない動作だったからハワ…かみさま…とか思ってたけど怖いよ…いままで意識してなかったけど、どこの劇場も足場あんな感じなんだろうか。

明治座の花道の関係かとは思うけど、客席に降りる回数減らすとか絡まりそうな衣装の人は舞台袖から出すとかしてもらえないものか…と思ってしまいました。    

 

  ・全体所感 

一言で言うと、 勿体ないなーーー!!! です。

  めちゃくちゃがっつり作られてるのに何の話かわからない。 三日月(この話の主役)の意図や目的を明らかにしないまま3時間半走らせてるから、なんかめっちゃ走ったけどなんのために走ったんだっけ?ってなる感じ。  

一幕までは(長いけど)なるほどなるほどと思ってて、で、二幕でどう来るの!?って思ってたら結局二幕で何も起こらなくてただ悲しいだけだった…枝葉がしっかりしてて、幹はどんな感じだ?と思ったら幹ないです!えっ?みたいな。  

最終章の前半だけ見た感じに近いし、集大成やるには尺というか作品数足りなかったのかな?という印象。 悲伝一本ではいまひとつ物語の体を成してないですよね。連作ものの一つだというのは承知してるんですけど、個人的に連作でもそれぞれが一本の作品として成り立ってるものが好きなんだ…。  

 

面白いし筋もぶれてなくて(これが一番大事)、コンセプトも雰囲気も好みだし真剣に熱意込めて作られてるのが伝わってくるだけに、このよくわからん感が惜しい。あとエンタメとしての見せ場に欠けるのも痛い。ストーリーはどうしようもなくても演出どうにか…盛り上げようはなかったのかと…すいません何様目線です………。  

 

とはいえ、ちょっとゴリ押しだけどまあスッキリ見えるようにまとめました!という方向に走らなかったのはすごいし、安易に体裁を優先せず、過去作品からのスタンスや軸を守り通してくれたことはとても嬉しいです。 素人観劇マンのわたしが考えることなんか当然プロの作り手側は分かってると思うので、これは取捨選択の上での最大限ベターな形だったんだろうな。

(でも惜しいものは惜しい)  

 

と、グダグダ言っといてあれなんですが、この幹のなさこそ悲伝、というところは少なからずあるのかもなと思います。

三日月の意図も目的も、正体さえも分からないままだからこその悲しさ、寂しさ、虚しさ。

何をすべきなのかもわからなかった、だから何もできなかったというのは、「何かを成そうとしたけど駄目だった」結果のバッドエンドよりずっと悲しい。 その意味では悲伝の名に相応しい形なのかもなと思います。  

 

それも含めて好きだなぁと思えるテイストだったので、そして何度も言うんですが作ってる方々の情熱も真剣さも伝わってくるものだったので、それだけにひたすらもうちょっとこう…!!という思いが捨てきれない、というのが現時点の気持ち。    

 

しかし今回スッキリ終わったら、次の刀ステは末満さん本丸ではなくなるのでは?と思ってたけど、これ末満さん続投するしかなくないですか?

悲伝の結末がああなったので、これまでの刀ステは全てひっくるめてなにかの前日譚、エピソードゼロ的な趣が出てきたと思うんですよね。

前日譚は前日譚であれで終わるとしても、これからの刀ステで「本編」もしくは「SEASON1」が始まって、その中であの三日月が、三日月が愛した本丸が生き続けてほしい。  

 

私は「この」三日月がいる間に、山姥切が三日月と対等になるくらい強くなって三日月をぶん殴って、力業で結いの目を解いてハッピーエンドに連れて行って欲しかったんですけど、それって今思えば整合性のない夢物語だよなぁ。

そう思うと、変に甘いことをしない誠実な脚本だな…と思うし、だからこそ山姥切には三日月がいなくなったその後で、三日月を超えるくらい強くなって、次のシリーズでだれかを照らしてほしいなと思います。   

そしてできればいつかまたあの三日月と巡りあって、光源になってほしい。彼の無二の、煤けた太陽として。

 

 

今回、三日月と山姥切はセリフ変えなくても方向性に振れ幅を持てる役柄になってると思うので、終盤戦どんな二人が出てくるか楽しみです。