オリビエートの坂の上

観劇のメモを投げ込む予定です

COCOON 星ひとつ感想

 

5/25、5/31  COCOON 星ひとつ

 

 

 

星、伝説じゃん……伝説をこの目で見る機会に恵まれた…。
はじ繭から入って(LILIUMとNU版Tもすぐ買って見て)マリーゴールドが初観劇だったので、あのクラウスやらあのダリちゃんやらあのソフィやらを眼前で観れるとは思ってなかったんですよね。なんという僥倖。
しかもあのシーンやあのシーンをですよ…人間生きてればいいことあるもんだな……。
演者が違うとはいえウルはNU版Tの流れを汲んでるようだったし、今までの総まとめ、かつTRUMPシリーズの新しい始まりなんだなという感慨がすごい。今後は血の戦争周りとか何千年後の結末部分を扱うんだろうと思うので、実際あのクランが描かれるのってこれが最後かもしれないしね。

 


今までの作品を見た上で月から観る星、現実味がないくらい凄惨で、でもこの上なく甘やかでやさしくてあたたかかった。

いとしいよね、月も星も。もがいてももがいても苦しみしかなくて、悪いほうにしかいかなくて。でもそれは、そこにあった愛も希望もなにひとつ損なったりはしなくて。

美しいいきものだなぁ吸血種は。血に縛られて呪われて、でもあんなに美しい。

 

最後に静かに散った赤い花びら、あれはウルのいのちに見えた。
血であり、受けた愛であり、向けた愛であり、それらでできた彼の生がはらはらと注ぐ光景はあんまりにも尊かった。

星ひとつ、かつてなく夢のようにやさしい光に溢れていて、命を終えたウルの走馬燈のようでもあったな。あの日々がウルの目にこんなふうに見えていたのなら、どんなに苦しくても確かにそこに幸せはあったのだと思えた。 ダリが彼の生を絶望ではないと断じたからではなく、きっと本当に希望があったんだと。

 


☆ダリの話

ダリは強い。どんな局面にあっても、立ち止まれないし俯けない。毅然と、あるいは傲然と戦うしかできない。
TRUMPと相対してすら一歩も引かないし引くという発想がないの、もはや業だな。膝つかされるのにゴリゴリに抗ってるのも、憎しみを隠そうともしないのも最高でしたね。彼は神を信じていないんだろうな。

そもそもあの呪いに対して「負けるな」なんて言葉が思いつくのは、強いやつの発想ですよ。そういう強さは、おそらく生育環境とか生来の要素からくるダリの性質だし、自身もそれをよしとしている。

ウルの死を絶望だと呼ばせないの、ここまで強いか、と思って呆然としてしまった。もはや傲慢で暴力的ですらある。そして同時に、この人はこうすることしかできないんだなと。あの場で泣き崩れるような弱さがあれば、きっとこんなに苦しまなかったんだろうに。強くしかあれないの、それも一種の呪いだよなあ。


そしてそれが悪いほうに出ちゃったのが子育てですよね…。
当たり前にラファエロにも自分と同じことができると信じ切っていたんだろうな。ラファエロ自身が優秀だから。自分の子だから。フリーダの子だから。もともと過大な期待(というか思い込み)に、妻への信仰まで上乗せしてるんじゃないかと思う。母親に似たこの子は、彼女のように強く気高い子なんだと。

それはな…さすがに期待値が高すぎる…。そもそも弱いという概念自体が頭にないのでどうしようもないんだけど。フリーダにも弱さはあったし、そもそもラファエロはフリーダではないし、まずダリは自分を基準に置いちゃだめだ。
ラファエロへの態度がアレなのは(おそらく自分の父親に父親らしいことをされた経験がなくて?)どう接していいのかわからなかったのと、フリーダがあの子の前では厳格な父親でいてと言ったからなんだろうな。
厳しくしているとは思ってただろうけど、自分の強さが基準になるのでラファエロへのダメージを見誤っていた。あとそもそもダリ、他人への情緒的なコミュニケーションがかなりサイコなので……。

ラファエロも、もうヤダ!!パパ嫌い!!!って言えればよかったんですけどね。ダリはきっと聴いてくれたと思うので。でもそんなことは起こりようがないのだ。

 

ダリ・デリコの名前が何千年も先まで残ってて、孤高に生きた偉大な吸血種だと言われてるの、とてもつらいものがある。あの後どんなふうに生きていたんだろうな。もうなんにもないのに。老いて死ぬまで、自分の大切なものをぜんぶ奪っていった神様を守ってたんだろうか。


そんなことを考えて欝々としてしまったあなたにデリコズ・ナーサリー!!!正気か???

そんな地獄の畑を耕すような真似を……月星やったあとでそれやるの、さすがに正気を失っているのでは………。短編小説になるのか朗読劇になるのか、がっつり一本やるのかわからんけども、さすが考えることが違うな。とても観たいです。

 

 

☆ウルの話

ダリちゃんもラファエロ兄ちゃんも、ウルのこと絶対めちゃくちゃ甘やかしたでしょ………。
見ればわかる、あれは大事に大事に甘やかされて育った子だ。ウル、素直というか純粋というか、他人が自分を受け入れて当然、みたいなある種の傲慢さがあるよね。

ウルがソフィになりたかったことを改めてあんなふうに語られると、めちゃくちゃ救いだ…と思った(この考え方、けっこう傲慢でもあるんですけど)。ソフィはダンピールだから短命で蔑まれていて、だけど卑下せず高潔に生きていて、ウルがほかの誰でもなくそんな彼に憧れていたのなら、ダンピールとして生まれた運命にも、死に怯え続けろという呪いにもウルは負けなかったのだな、と思えたので 。怯えて怯えて抗って抗い続けた彼の人生が良いものだったのかは分からないけど、少なくとも負けなかった。

 

ウル、カテコで微笑んでたんですよね。あんまりにも満ち足りたやさしい顔だったので、崩れ落ちそうになった。

終わりの時にどんな姿だったとしても、たとえどんなにずっと苦しかったとしても、彼の生に幸せはあったんだなあ。

 

 

☆ソフィの話

星ひとつのソフィ、ほんとかわいくてやさしくてかっこいいよね !!これがウルの目が見たソフィなのか…。微笑ましさMAX…。

あとラファエロに憧れてるのめちゃくちゃよく分かってつらい。ラファエロに対してはいつも素直な子供みたいな顔をしている…考えてみるとあのソフィが他人に憧れているという事実、ものすごい破壊力があるし、ウルも反発してはいるけどお兄ちゃん大好きだと思うので誇らしかったんじゃないかな。

 

ソフィがウルを咬んだ瞬間、ああそうだそうだったじゃないか、と思って号泣してしまった。咬み方がまんまダリだったので…。冒頭とあのソフィとラストシーン、ウルに向けられた愛があまりにも綺麗に繋がっていて、やさしくてやるせなくて泣いてしまった。

 

ウルの亡骸が焼けてなかったの、今作一番の衝撃の事実。物言わぬウルにソフィが覆いかぶさって炎に焼かれてるの、この作品で一番美しいシーンだと思う(観た人の頭の中にしかないけど)。
クラウスは傷を受けても痛みを感じないってスペクターか何かで言っていたと思うけど、その時のソフィは普通の人間みたいに痛かったし熱かったよね。
火がおさまるまで何時間も何十時間も全身炎に焼かれながら、何を考えていたんだろう。

何千年あとまで、マリーゴールドやLILIUMのときまで、ソフィはあの炎の熱さや痛みを、ウルを置いていくさみしさを覚えてるんだろうか。それとももうそんなことは忘れてしまっているだろうか、逆にあの時ウルを放ってクラウスを追いかけなかったことを後悔しているだろうか。

まるで火葬だよなあ。死んだ友達の棺に入って、生きたままいっしょに焼かれるような。あのときソフィ・アンダーソンは死んだのかもしれない。

 

 

 

ラファエロとアンジェリコ

この二人の話ですか?月にずぶずぶに思い入れてしまったせいで辛すぎて目を背けているので特になにも言えないですね…。

回によるんだろうと思うんですが私が見たときはラファエロ、父親に怯え切ってたのでダリちゃんの肩をガクガクに揺さぶりたくなりました。あそこまで怯えられてて気づかないのさすがに無能すぎるのでは????肩がビクッとしたりチラチラ父親ばかり見ていたり、何より目が。子供が怯えたり追い詰められたりしているのはつらい。とてもつらい。

そしてアンジェリコはね…完全に月の頃の彼を失って狂ってしまったらまだ楽だったのかもしれないのに、そうはならなかったんですよ。違うラファエロを殺したかったんじゃない、って気づいてしまうの、らしすぎてアァァ…となりました。

ソフィに負けたラファエロを見て、信じられないみたいな目で口に手をあててずっと固まったまま見てるのとか、ラファエロがソフィを咬んだ時も燃やされた時もずっとずっと瞬きもせず、泣きも笑いもせず見てるのとか、どうしろというんだ…。
ラファエロが燃えたあと、すぐに周りの人を突き飛ばしてはけていってたと思うんですけど、あれもう次の行動が決まってるんですよねきっと。アンジェリコは判断が早いし迷わない。そんなとこまでアンジェリコのままじゃん…と思って…。

二人ともあまりにも何も報われなさすぎて、彼らにあったはずの未来が悲しすぎて、ウルの生はダリが希望にしたのに、じゃあこの二人はなんだったの?って八つ当たりをしてしまいそうになる。ウルは生まれたときに呪いで手を加えられてるので死にも祈りという人の手が入ってイーブンだし、どっちの人生のほうがよかったなんてことは絶対ないんですけども。

 

 

☆そのほか

・モロー、クラウスがTRUMPだって聞いたはずなのに、クラウスにしがみついてアンジェリコの邪魔しないように抑えるんですよ。行動自体はイニシアチブな気もするんですが、目があまりにもアンジェリコ様を心配していたので、全然そう見えなかった。あのシーンのジョルジュとモロー、どうしていいか分からないのとアンジェリコへの敬愛がぐちゃぐちゃになってて、パンフ小説の殺意高すぎと思いました。アンジェリコ様の手袋、片方ずつ違ってたね…。あのアンジェリコ様は、それを着けてくれるアンジェリコ様だったんだよ…。

 

・月と星、屋上と地下書庫の対比がアア…ってなる。星で「地下」って言葉が出た瞬間なんか落ち込んでしまったよね。閉鎖的でどこにもいけない地下。立ち入り禁止の場所を隠れ家にして入り浸ってる弟と、入るのも躊躇う兄。

 

・「膝を汚してしまってすみません」 圧倒的上位者の態度…まんま神の慈悲である…最高…。クラウス、デリコの祖先とかと面識あったのかもしれないな。

それはそうとクラウスこわすぎるね?至近で見ると涙引っ込んで固まるくらい異様だ。底なしに異様。

君たちもTRUMPですよ、と言ってるとこで前から思ってたんだけど、クラウス、むかしむかしほんとに教師だったりしたんだろうか。言い方がちゃんとやさしくて慈しみがあって、この人は神になるには善良すぎるなと改めて思った。

 

・萬里、こときれる瞬間にソフィのことじっと見てるんだよね。反射的に自分を襲ったやつの方見たり探したりするかと思いきや、ソフィだけをみててウッ…となった。でも萬里は、ここで終われてよかったのかもしれない。ファルスになったソフィにもし会ったら、どんな顔をするんだろうか。

 

・なんか思い出したらまた追記します。月の感想?とてもまとまりそうにないです