オリビエートの坂の上

観劇のメモを投げ込む予定です

絵巻の奥にあるもの(舞台『刀剣乱舞』 天伝 青空の兵 刀ステ 感想)

3/20(土) 昼 舞台『刀剣乱舞』 天伝 青空の兵 大坂冬の陣

IHIステージアラウンド東京

 

ネタバレある+説明端折るので観た人向けです

 

 

概観

 

刀ステはステアラでも刀ステだなー!って感じでした。風呂敷広げつつの根幹はアイデンティティ譚、そして周り巡るリプライズ。

一番好きなシーンは一幕終わりの自我問答、一番抉られたのはタイマンで山姥切が弥助に言うセリフ、圧倒されたのは清光と家康の老若対決です。

 

印象的だったシーン三つ抜粋

 

アイデンティティ問答

一幕の最後、秀頼が自分の在処に迷い、一期にお前は何者かと問うシーンです。

ひとと刀が向かい合って己を問う構図は刀ステの真骨頂だと思ったし、一幕ラストとして過去最高に美しい幕切れでした。自分が何者かを問うことの寄る辺なさと深淵と苦しみがいかんなく表現され、だからこその尊さと美しさが光になって差し込んでくるあの光景。

気づいたら手が震えてました。

本当にブラボーです。こんなに美しいものを見せてくれてありがとう。

 

・喪失について

二幕で山姥切が弥助とタイマンするとこです。あの「喪う覚悟はできている」ってセリフ、人の心なさすぎというかどんな顔してこのセリフ書いたんです???いやすごいいいシーンだしまっとうに流れに合ってて抜群なんですけども!!

弥助が大切な人を喪った気持ちが分かるか!!って言ったとこから既に聞いてるこっちはちょちょちょちょやめやめやめ!!!!!ってなってるのにセリフは止まらない(それはそう)。

物語の時系列では「まだ」だけど(天伝が悲伝前であることは、清光と山姥切の発言から明らか)、その山姥切を演じる荒牧さんはもう悲伝を生きてしまった人なんですよ。その人に大切なひとを喪う悲しみと覚悟をあんなに風に??語らせる????

それ過去の未来に対する自傷ですよ!!!!(いや自傷ではないけど)となって、ゴリゴリに抉られました。山姥切の言い方が、伝え方があまりにも真摯だったので。ほんとうに心底「『覚悟はできている』と思っている」のが分かったので。すごい抉られたけど、無類のシーンでもありました。めっちゃよかったよ…あらまきさんちょっと見ないうちにまたレベルアップされてた…よかった…ほんとにどんな気持ちであのセリフ言ったんだろう。

悲伝の後の山姥切なら同じことを言うだろうか、言える場合と言えない場合があったら…とか寝る前に考えてしまってうなされそうです。

 

・老若一戦

清光と家康の一戦、たまたま巡り合わせた二人なのに双方すごい覇気と説得力、劇中の言葉で言うなら殺気、で圧倒されました。

戦に生を見出す家康に対して、「生きることが戦いだ」とあんなに説得力持って言えるのすごすぎる。もう真ん中にドカーンときてしまって泣きそうになりました。今回の歴史側のメインである秀頼と家康の話の総括じゃないですか。

 

加州、山姥切と同じ頃から本丸にいたという設定に違和感のいの字も感じさせないし、沖田さん周りの話も唐突(流れは通ってる)に出てくるのにすごい芯の通った感情が伝わってきて。

あらゆる物理的制約を消し去っている…これがリョウマツダ!!圧倒的実力!!好き!!!となりました。



演出&脚本

いつもの刀ステって感じでしたね(完)

話はフェイクが入ったりテーマの本数が多かったりで複雑め。二幕初めにおさらい入れる(超親切設計)くらいならもっと単純にして30分縮めてくれた方が私はうれしいんですけど、それは個人の嗜好ということで。

太閤左文字が山姥切国広を知らない時点でループや時間軸のことが(一部漠然と)答え合わせされるのも親切。それをいったん横に置いた方が今回の風呂敷要素とアイデンティティ譚に集中できると思うので。

 

ステアラ的なことで言えば、セットが広いなー高いなーでもあんま回らんな…?(修羅天魔やメタマクと比べるのもアレだけど)って思ってたら最後にハイどうぞー!!!って全回転されてめっちゃ笑いました。

最後の全力回転、群像劇であり絵巻物であるという表現としていいなあと思います。絵巻物モチーフは冒頭と、二幕で絵巻物調の雲が晴れるとこが記憶に残ってます。歴史の雲が晴れたところに青空を見出すの、今作での青空の意味を考えると示唆的で好きな表現です。

 

あと細かいとこを箇条書きで。

・時間遡行軍のみんな〜!

思わずゾッとしてしまった。私たち(審神者)が時間遡行軍、ありよりのあり。ほら遡ってるし。

 

審神者の手

マジカルアイテム登場!力技〜!って感じだったんだけどなんか不気味でいい感じでした。猿の手っぽくて、これ絶対ろくなことにならんなって思わせるやつ。

 

・間に合ったの対比

老いて終わりに近づいている人間の「間に合った」と、遅く生まれすぎた若者の時代の終わりに「間に合った」。 上手と下手でそれぞれがそう発するの、構図がめっちゃきれいでした。

 

・真田リリー

あんまりだ!!と思ったりもしましたが、まあ代償の話が出た時点でそうなるだろうなとも思ってました。それにしてもリリー。

 

他にも人間組!!芝居が!!うまい!!最高!!とか言いたいことは色々あるんですけど、まとまりきらないのでこの辺にしときます。

しかしなんか、過去作の総ざらいしてるとこからしても佳境に近づいてる感もありますね。(総ざらいというより相関提示とか補足説明なのだろうけど)

 

根拠のない予測ですが、きっと最終作では最初に戻るんじゃないかな。あの燃ゆる本能寺に。そこにはどんなひととものがいて、どんな物語を紡いでいるのか、まずは夏の陣が楽しみです。