オリビエートの坂の上

観劇のメモを投げ込む予定です

落日を生きる(舞台『刀剣乱舞』无伝 夕紅の士 大坂夏の陣 刀ステ感想)

4/20(火) 昼 舞台『刀剣乱舞』无伝 夕紅の士 大坂夏の陣

IHIステージアラウンド東京

 

ネタバレある+説明端折るので観た人向けです

 



概観

夕紅(=豊臣家としての落日、放棄される時間軸)の中で生きるひとと刀の話でした。

全体としては、①胸に染鶴の矢を受けた②三日月そんな顔しないで・・・というか三日月にそんな顔させないで・・・という心境です。

そして私たちは次に何を見せられるんだ???



内容とか

一部

特に何も起こらなかったな??

とりあえずオープニングの染鶴がかっこよすぎて目を見張りました。他の人が喋ってる時に脇で遊んでるの可愛いな~~~!!ジカンソコウグンガシャベッタア!!

 

あとは三日月ですね。姿を見るだけで泣くかもとすら思ってたのに、あまりにもそこにいつも通りに存在していて、悲伝は夢だったのかと本気で思いました。あんなに苦しみながら見続けてきたことは全部辛いただの夢で、今日もいつも通り三日月はそこにいる、そんな風に立っていて。考えてみれば本作は悲伝の前なわけで、時系列でみたら「いつも通り三日月がいる」状態なんだからそう在るのが当たり前なんですよね。その当たり前をさらっと演じるの、すごいなと思います。

 

二部

殺陣のペース配分が一部<<<<<<<二部で笑いました。概ねずっと戦ってるというね。

全回転殺陣、あ~これ天伝でもあったな~今回出てくるの早いな~とか思ってたらまさかの二週目突入、三日月360度担当で目玉飛び出ちゃった。その発想はなかったな!

 

印象的なシーンは、三日月と鶴丸の会話ですね。永遠に続くとしたらどうすれば狂わずにいられる、という問いに本丸があるから、と三日月が答えますが、その答えこそ狂気じみているとも言える気がします。鶴丸は殊勝だなどと言っていましたが、三日月がそこまでの思いを持っていることに本気で驚いていたんじゃないかな。三日月といると退屈しないと言う鶴丸を見ていると、維伝の「寂しいんだ」のトーンが頭の中にぶわっと蘇って目の前の鶴丸と線になってつながって、たまらない気持ちになりました。

あともうひとつ、三日月と高台院の会話も印象的でした。持ち主でも本当に手にすることなどできはしない孤独な刀だと言われた時の三日月の表情といったら、一見なんでもないようで寂しさとか悲しさ、子供が置いていかれるときのような感情が見える気がして、でもやっぱりいつものように泰然と穏やかでいるようにも見えて、もうなんともいえないとしか言いようのない表情でした。仮に高台院の言うことがある一面の事実だとしても、そんな顔三日月にさせないでくれ、とつい思ってしまいます。人が手の届かない月だと言うから、その刀は手の届かない月になるんだよ・・・。三日月はここにいるのに。少なくとも本丸の刀や主にとってはそうではないのに。悲伝で見た三日月のいろんな場面のいろんな表情とつながって見えて、心臓を引き絞られるシーンでした。

 

そして逆回転カテコ、天伝で回転カテコやらなかったから絶対やると思ってたけど本当にやったよね。しかも三日月だけその輪の外を歩きながら、ニコニコと皆を見ている・・・ああーーーー・・・・。

からの悲伝→陽伝チェンジですよ!!悲伝当時、そういうの今後あるかもなと思ってたのに完全に忘れてて油断してモロにパンチくらってしまって悔しい!!(?)



脚本&演出

脚本

夕紅=斜陽みたいな感覚ですよね。豊臣の落日と、時間軸としての終わりと(正確に言えば放棄されるだけで終わっているとは言えないのかもしれませんが)。沈みゆく世界の話。

落日はただ日が落ちるのみ、というスタンスが厳然としていたのが好みでした。なんの番狂わせも起きず、起こるべきことが順に起こっていくだけ。

そしてその中でもがく人達の在り方が皆はっきりとした意思に基づいていて、わが身を省みて色々と考えさせられました。

内容以外のところで言えば、もっとテキトーにするとこはしてコンパクトにしてよ!という感じです(毎度思うので今更ですが・・・)。

 

演出

大喧嘩しました!!!果たし状を送りたいけど私はただの客なので、素人の一意見としてここに書いておきます。素人批判のお好きでない方はお手数ですが薄目スクロールもしくは目次から次にジャンプお願いします・・・。



全体的に平面的でした。物理的にも質的にも。ステアラやぞ??前通路だけじゃなくてもっと奥も上も横もあるやん??意味なくない?ただこれはセットが前作のままだったことに起因しているところもあると思います。質的にっていうのは、メリハリがなく華に欠けるという感じです。二部の三日月と鶴丸のシーンなんか、情緒的にひとつのピークをもってくるべきところじゃないですか。それを前通路での立ち話と気味の悪いマネキンで済ませるのはいかがなものかと。あのシーンにちゃんと演出つけられないなら脚本のほうを変えるべきだとすら思いました。二人の演技が凄くいいので余計に勿体なくて勿体なくて悔しい。役者の芝居を活かせない演出ってそれは演出ついてると言えるのか?というのはいつもは思わないけど、今作は全体的に思ってしまいました。十勇士の人数が多すぎて分散した結果かなという気もしますが。

 

あとは映像のダサさですね。ステアラの大画面活かして映像使いたい、わかる。いいと思います。でも、それなら映像の質を上げるべきです。いつもダサいんだから・・・(悪口)。資金の問題か請負の質の問題か、なんなんでしょうねあれ。作ってる側にダサいって自覚あるんだろうか。自覚はあるけどやむない大人の事情でそうしてるんならすみません。

最後に、秀頼の自刃の場面。あれ斬首の映像いらんやろ!!!!!!すごくいいシーンなのに興覚めにも程がある。あのシーン見て、映像がないと斬首だということが分からない人います?いるとしても、そちらに配慮してシーン自体をぶち壊しにする必要ないです、絶対に。元から破壊表現とかでもわざわざ映像入れるの興覚めだなって思ってたのですが(しかも映像がダサいときている)(また言う)、最悪の形で出ちゃったな~って感じです。

 

逆に良かったところは、秀頼の自刃のとこの三面鏡(三面ではない)から形態変化して彼岸花(に見えた)を映すところです。あのシーンは奥行きもあって本当に印象的でした。美しかった。

だからこそ、できるじゃん!!!こんないい視覚効果つくれるのに他は何なの???って思ってしまい・・・良いシーンがあるからこそ勿体なくて悔しい!!!って余計になってしまいました。長々とすみませんでした以上です・・・。



その他

・三日月の殺陣、オープニング時点でハッ!!今までと違う!?さらに進化している!!と思ったんですが、360°回ってくれたのに凝視してても何が変わったのかよくわからず。止めの動き(?)かなと思ったんですが。ここが違ったよっていうのがお分かりの方は教えてください。

 

・長谷部の殺陣も変わってましたね。受けるときの重さに説得力が出た?みたいな感じの変化に見えました。敗北を悔しがるシーンのお芝居もすごく好きだったのですが、地面に倒れられるとステアラでは見えない人が半分以上いそう。でも倒れてないとおかしいし、視覚の不備を補えるくらいに良い演技だったと思います。

 

・謎の人物X(一応)の殺陣、すごい華やかで鮮やかでした。そして衣装の裾をひらっと目立たせるのが上手いこと!捌きが上手い!存在感の差に感動しました。

 

鶴丸が三日月に先に行けって言うシーン、三日月が姿を消したのを確かめるのに鶴丸が一度振り返るのですが、この表情が最高にカッコよかったです。胸に矢を受けました。配信のカメラさんここ抜いてる?スイッチングさんちゃんと映してくれた?大楽よろしくお願いします!



にしてもまさか陽伝くるとは思わなかったですね。最後の鵺とよばれる・・・じゃないな鬼丸??というのも謎だし、座して待つべし!






私的な話 ※自分用メモなのでスルーしてもらって大丈夫です

 

実はちょっと前に思いがけず不治の病だよ!という宣告を受けたため(といっても有病率20人に1人くらいらしいのでよくあるやつなのですが)、メンタルぼこぼこで劇場まで行きました。一応首の括り方調べようかなと思ってたくらいです。何やっててもずっとそのことが頭から離れなくて、食べれないし寝られないしで最悪だったんですが、幕が開いた瞬間きれいにぜんぶ頭から消し飛んで、終わったときには憑きものが落ちたように身体が軽くなってました。

 

それに観てる時は思わなかったけど、「変えられない落日の中で人がどう在るか」という本作のテーマは自分の状況にも重なるんですよね。進んでいく病は変えられない、その状況でどう生きるか。日は落ちていくけど、沈むまでの行動は自分次第。自分の意思で決めて、自分が行動するもの。病がなくても人間はいつか死ぬので、もともと誰もがそうだとも言えます。そう思うとすっと楽になって、ちゃんと晩ごはんを食べれて、昨日より寝れました。

 

また演劇に救われてしまったな・・・と思います。今までも天災とか家族の死とか色々あって、その度に数時間全部忘れて救われて今日まで来て、さすがに今回はと思っていたけど、やっぱり救われました。これ書いてるのは観劇の翌日なのですが、地に足がついたというか、とりあえずは受け入れてやれることを淡々とやろう、という気持ちになっています。自分でも不思議なくらいに。

 

先の見えないリスクばかりの状況の中、この公演をしてくださったみなさんに感謝します。ここに救われた人間が一人います。本当にありがとうございました。