オリビエートの坂の上

観劇のメモを投げ込む予定です

2018.10観劇分 感想メモまとめ

毎月書くほどマメにはなれない感想メモです。

 

 

 

 

10/7(土) 恋川純弥劇団

@梅田呉服座

 

大衆演劇2回目。衣装も紙吹雪も華やか。たまに紙吹雪が塊ごと飛んでたけど紙吹雪って塊だったんだ?お芝居はお芝居というより出し物って感じだったけど、あのくらいのノリが好きな人もいるんだろうな。

神山大和さん(たまたまツイッタで写真見たことがあった)、商業っぽい華やかさのある人だなぁと思いました。明度の高い感じの華やかさ。あと、お名前分からずじまいなんだけど特徴的な表情と動きをする方がいてつい気になって目で追ってしまった。細くてそこそこ背が高くて目立つというのもあるんですけど、目元が笑わないんですよね。視線が正面よりやや下向きで、たまにちらっと横を伺うようなときもあって。あと癖なのか、髪や衣装をよく直す。って書くとマイナスに聞こえると思うんですけど、不思議と好きだった。動きもたまにキュッと締まってる感じのとこがあって、それもなんかよくわからないけどいいなぁと思いました。なんとなく肝座ってそうな印象だったから好きだったのかもしれない。

 大衆は先月から引き続きで劇団ふたつ見ただけだけど、やっぱコンセプトは違うな~という感じでした。これからもふらっと行ければいいなぁ。なんせ安いんだよね…!2,000円ちょいとかで3時間前後楽しめるという。イベント日とかじゃなければ当日行けばいいし気楽。おばさま方はちょっといいお弁当買って何人かで来てたりして、彼女たちにとっては一種のレジャーなんだな…と思いました。新しい世界を見るのはいつも楽しい。

 

 

10/8(月祝) メタルマクベスdisc2

@IHIステージアラウンド東京

 

ゲネ映像と前評判から楽しみにしてたんですが、櫻子さん半端なかった。殺意のデュエットで踊り狂う、華奢かつパワフルな後ろ姿が頭の裏にこびりつきました。体からでてくるエネルギーが目に見えるみたいだった。まさに発露。強すぎて一幕終わった時点で櫻子夫人のことしか印象に残らなかったレベル。

無邪気で可憐で、人間の胎から生まれた悪魔の子って感じで終始ぞくぞくしっぱなしでした。最初からギア全開だけど、ケンタ持って出てくるあたりからやばかったですね(しかも超かわいい)。

松也ランディも良かったなぁ。バーンとしててかっこよかった。

このランディは私の目にはすごく狡く映るんですよね。夫人のことをすごく大事にして愛してたんだろうけど、このランディがこの夫人を愛しているのは、そうすれば自分が幼稚な甘ったれの子供のままでいても許されるからですよ。自分の汚いところを自分で負えなくて妻を言い訳とか隠れ蓑にしているのよ…愛してるのも本当だけど、その愛情の根っこは自己愛。しかもそれに対して無自覚なんだよな。魔女が妻に見えるのは自己正当化だ。

この夫婦、それぞれに直情的で短絡的な意思なき人なんだよなぁ。精神が未発達というか。それを素直に体現している妻、妻を隠れ蓑にして自分はまともだと信じ込んでる夫。でも相手のことを頼ったり大事にしてることには違いなくて、自己愛の結果としての他者への愛は果たして愛なりや、と考えてしまう。総じて非常にツボにくる夫婦でした。

あとレスポール王と王子の高潔さ明晰さ、正義の体現みたいな光のパワーが強くて、あの夫婦にこの王親子持ってくるの最高!と思いました。人殺しが好きだからだのとこ、王の問いかけは既に断罪だし、このランディは実際に人殺しが好きですよね。好きというより、人殺しの意味をちゃんとは受け止められなくて、そのこと自体の重さより自分の快不快のほうが重要度が高くなってるというか。その短絡的な幼稚さと王の高潔さの対比な…。

そして原ジュニアすごかったな!真っ白でキラキラして光でしかなくて。ダンスのときの身体の使い方の種類があからさまに一人違ってめっちゃ興奮しました。圧倒的王子。バックダンサーいっぱい連れて、あの広いステアラのど真ん中で歌って踊るの最高じゃないですか。ファンの方みんな見に来れた??私がファンなら号泣している。

髑髏城とちがって脚本演出あんま変わってないけど、disc1と全然違う物語になっていて贅沢さに震えるよねぇ。disc2は、定められた末路に向かって行進していく二人のこどもの話だった。早く映像ほしいなぁ…櫻子さん好きだーーー!!!

 

 

10/13(土)  文豪ストレイドッグス 黒の時代

@森ノ宮ピロティホール

 

突然気まぐれを起こして行ってきました。原作ミリしら(アニメはシーズン1を数話見たことある気がする)、キャストもストーリーもノーチェック。1作目も見てないです。

とにかく演出がクールでしたね!こういうの、演劇的って言うのだろうか。スマートで特徴的でした。異能力要素が薄いのもあるけど、.5って感じあんましなかったな。短いし演劇的だし、義務教育の芸術鑑賞でやるといいのでは?って思いました。さすがに贅沢か。(でも子どもの感性に贅沢をさせずに何に贅沢をさせるんだ?)

バスのシーンの演出よかったなぁ。地の文を舞台で聞くのが苦手なのですが(嫌いとかではなく、単に頭に入らない)、言葉を理解しなくても音楽として聞いててオッケーでした。そこからの、子供たちが人殺しの道具やタバコを渡していく演出、いいですよね。心象表現として、そして結末の暗喩としてとてもすっきりしてて、行きすぎない情感があって。人の頭の中に存在する他者はその人を介した他者だ、という感じが最高に好みだった。

そのあたりからの後半、流れがスムーズでした(前半はシーン転換とかよくわからんなと思うところもあったんですが、骨子はすっと追えてたので大丈夫)。そして山場の盛り上げ方は抑制的なのに的確。おださくさんが死ぬところが山場だと思うんですが、そこでちょうどこちらの気持ちにズドンとくるようになってる。死ぬ人間から生きていく人間に渡されるバトン。受け取る方は死ぬのを待ってたりするんですけど、おださくさんはだざいさんの死にたさの中身をちゃーんとわかってるんだよなぁ…。おださくさんからだざいさんへの「いいことでも悪いことでもお前にとっちゃ同じだろ」みたいな言葉、何を言ってるかちゃんと理解してる人のセリフでびっくりしました。谷口さんすごい。表そうとしてることと、それを演じた結果が同じというか。

そして多和田さんのだざいさんがそのセリフを体現しているだざいさんであることもすごいんですよね。この話、個人的にはおださくさんを内包しただざいさんの話だと思ってて、だから最後に観た者の脳裏に残るのはだざいさんの姿でなくてはいけない。なぜなら生きてるのはだざいさんなので。と思わせ、かつその役割をきちんと果たしている多和田さん、いいなあ。こういうことをされると、キャスト表で二番目に名前がある役と役者に大注目してしまう。

包帯解けるところがやっぱりすごく印象的だった。するっととけた下から、美しい顔が出てきた時の無言の説得力。生まれ直すことの表現として鮮やかだった。そして暗転、あの心だけ残すような暗転、よかったなぁ…。

 

帰ってからアニメ観たんですけど、作品全体の抑制的なニュアンスは原作踏襲なんですね(書籍媒体読んでないですけど)。

個人的な好みとしてはもっとビリッとする箇所があってもいいのになと思ってたんですが納得。そのへん踏まえてもやっぱり、おださくさんが生きる話ではなくて、生きたおださくさんを内包した、今現在生きているだざいさんの話なんだろうな。個人的解釈です。

そういえば、だざいはこどもなんだ、みたいなセリフ、アニメにあったっけ?この舞台のだざいさんはそのセリフの通り造形されてるな、と思って印象的だったんだけど。だざいに限らず、キャラ造形はアニメとはちょい違う感じがして面白いです。原作ものはこれが楽しみですよね。

あと比べるもんでもないですが、舞台の生々しい説得力ってすごいなと思いましたね…。アニメとは種類が違う。質量も密度も湿度もある感情が当たり前のように板に乗るのは単純にすごい。

それにしてもラストあたりのだざいさんのベージュのコート、めっちゃいい布でしたよね!?あの布がもたらす説得力と情感の効果、抜群に好みだった。

気まぐれで観に行ってよかった作品でした。

 

 

10/20(土)  音楽朗読劇 ヘブンズレコード

@神戸新聞松方ホール

 

荒牧さんの方に行きました。

キャストさんみんなお芝居が達者で、みごたえありました。みんなしっかり上手くて、でもトーンと温度感に統一感があって。客層がほんと老若男女って感じだったけど、みんなが楽しめるものだったんじゃないかな。

脚本演出としては、ごまかしがなくて誠実な作品だな、という印象。汚いものも希望もちゃんと認めて、変な傾きを加えない。

劇場に飾ってあった荒牧さんのメッセージとツイート「今までとこれから。どちらも大事。前に進もう。」。この公演をそれそのまま表した言葉だなぁと思います。

そういえば今回はあらまきさんを観に行ったんですよね。刀ステしかみたことなくて、どんなお芝居する人なのかなと思ったので。やっぱり器用な人だなーという印象でした。この器用さとか方向性が、みてて私はとても落ち着くなあ。

 

 

10/21(日)  贋作桜の森の満開の下

@新歌舞伎座

 

なんかよくわかんねーーー!!(大の字)という気持ちが最初と最後のシーンの美しさで塗りつぶされた。なんせ色彩が美しい。桜の桃色、鮮やかな赤。舞台に大きく広げられた紙?の下からそれを破って鬼の角が出てくるの、あれでぜんぶ持っていかれてしまった。あと布!あの布の動きとか広がり方たなびき方、なんて幻想的なのか。リボンの演出も面白かったし目を惹いて素敵でした。音楽もそんな主張するわけではないのにいいところでいいのが流れてくるんですよ。

内容はよくわからんかったですね!くにつくりと、ある男女のはなし?かと思ったけど。この劇団の作品観るの初めてだったので、見方が分からなくて一幕は右往左往してた。二幕からは何となく分かるようになったので、もう1回見たかったかも。これ全部わかる人どのくらいいるのかな(というか「わかる」べきものなのか?)って思うけど、みた人がそれぞれ掬ったところだけでも十分成り立つ感じだよなぁ。演出すごい。

そしてなんせお芝居がよかった。演技だけでも成り立たせられる密度というか質というか。特に夜長姫好きだったなぁ…それこそ坂をすいすいと転がり落ちるみたいな高い声と無垢なトーン。桜が春に花をつけ、風に散って幹と葉になりまた春が来るのは「それがそういうものだから」で、夜長姫もそれがそういうものだから消えてしまうんだよな。

夜長姫の美しさと恐ろしさと夜長姫であるところと、耳男のなにものともいえずなにものかではある中庸さはすごくしっくりした取り合わせだった。

なんといってもラストシーン、ほんとによかった…。夜長姫の身がゆっくり崩れていくあの美しさ、花びらをかき集めて姫に降り注がせて泣く耳男、すがりつく身体も残らない寂寥。交差する帝の遣いと鬼の列がくにで、座り込んでしまった男はひとで。

特徴的なことばが追う前にぱちんぱちんと消えていくのが最初は慣れんなぁと思ってたんですが、それもこのお芝居なら素敵、と思えました。なにせほんとうに、ほんとうにうつくしい舞台でした。

 

 

10/28(日)  舞台 RE:VOLVER

サンケイホールブリーゼ

 

動ける人がガシガシ動く作品っていいですね!!全体のテンポと勢いも良くて、熱い作品でした。

なんせ植田さんのOPの決めポーズがかっこよすぎてリアルに体が震えた。植田さん初めて観たんですけど、アクション超カッコよくて、でもそれ以上に動き終わった時の体勢がめちゃくちゃバシッと決まるんですよ。ここをカッコイイって思ったの初めてだったので新鮮でした。

そしてやたらに声の通るいい感じの方がいるなーと思ってオペラのぞいたら橋本さんでした(刀ステで知ってたのになんで気づかなかったのか?)。横顔きれいですね!!なんか橋本さんは目線とか目元がきれいだなーと思います。

安西さんも初めて拝見したのですが、いい声でした。正統派って感じ。私の記憶ではこのお芝居は安西さんのアラキが高いとこに立ってるシーンからスタートなのですが、それだけ見ておっこのお芝居たのしいのでは、と思ったので冒頭担当の役者と演出のこわさ…と思いました。

あと刑事役の磯貝さんの安定感、すごく良かった。こういう方がいると締まるとこ締まるしいいよなーめっちゃいいーと個人的には思います。好きなタイプの安定感だった。

脚本については、個人的な好みからすると要素七割くらいにして!!って感じでした。テンポいいし詰め込んでもオッケーなんですけども。設定かなり練られてるんだろうなと感じたので余計にかもしれない。オリジナルらしいのですが普通に2.5かな!?って思ったのはなんでなんだろうな…。駆け足だから?今回のメンバーならもっと自由度高くしても面白かった気がするけど好みの問題ですね。

この座組、内々くささではないチーム感があるのが素敵。何かの意思の下に集まった感というか。板の上で生きるんだ、みたいな気持ちがヒリッとして、いい空気でした。

こういう界隈でオリジナル物ってやるの難しいんだろうけど、もっと増えるといいなぁと思います。作る側が好きなことを好きなようにやってくれるのって楽しい。