オリビエートの坂の上

観劇のメモを投げ込む予定です

髑髏城の七人 Season月 下弦 12/9感想

《本記事はネタバレを含みます》
《結局まとまらなくてまとまらないまま投げます!ごめんね!》
 
 
■12/9ソワレ(下弦二回目)  
※チケット増やしたよ!!!
 
 

二回目は心臓が裂けました。

いいことを教えてやろう、からの声音で、完全に張り裂けました...


頼むから笑ってくれ...一度でいいから本当の意味で嬉しいだとか幸せだとか思って笑ってくれ天魔王...
 
 
この回の天魔王は、優等生の子どもみたいでした。
 
優秀でプライドの高い兄・天魔王くんと純粋で天才型の弟・蘭丸くん。
父・信長は弟ばかり可愛がって、兄がなにをどう頑張ってもそれは変わらず、やがて兄は父親に失望して反旗を翻す、みたいなね。
 
自分がいくら優秀で能力自体に自信があっても、蘭丸への劣等感や嫉妬は拭えなくて。
自分の方が優れていると示せれば憧れの天に近づけると思っていくら努力しても天が寵愛するのはいつも蘭丸。
こんなのは間違っている、天だと思っていたものは天ではなかったのだ、ならば俺が本物の天になる!
 
ってなった結果がこれかと思うと、アッアッアアア...つらすぎ...ってなります。
そもそもあなたが焦がれて近づこうとしてたものは天ではなく信長という人であって、ならばあなたが欲しかったのは人の愛情なんだよ...
 
でも彼にはそれがわからないんですよね。
もしくは、分かってても認めることができなかった。自分が欲しいのは愛ではなく天だと信じて、引き返せないところまで来てしまったから。
 
この天魔王にとって、天を取るということは自分が正しかったこと、ひいては自分の存在価値の証明、自己肯定のためのものであったのではないかなと思います。
 
 
あと今回思ったのが、天魔王が死んだのは捨之助との対決の時ではなく、蘭丸にあの慟哭をした瞬間ではないか、ということ。
 
あの「私のことは何一つ!」という言葉で私の心臓が張り裂けたのは、あれは彼にとって絶対に口にしてはいけない言葉だったからです。
この言葉自体が、自分のすべてが間違っていたと認めること。
欲しいのは愛情などではなく天だ、と信じてきたことが間違っていたと、あろうことか蘭丸に対して自分の口で認めるなんて。
それは彼にとっての完全敗北であり、死と同義であると思います。
 
ずっと憎んで妬んで執着してきた、ある意味彼の人生の動機でもあった蘭丸がいなくなると思ったら、今までずっと張り詰めていたものが切れてしまった(そもそも、エゲレスの策が破綻したところで相当なダメージを受けてたと思います)。
 
いいことを教えてやろう、と言った瞬間には、ああもう終わりだ、と思っていたかもしれません。
そこからのセリフは、悲痛なだけじゃなく自分に対しての諦念みたいなものも漂っていて、ああもうやめて...ってなってました。
 
それでも意地と誇りで天を乞うて蘭丸を斬ったのに、結局は蘭丸に庇われて。
愕然とした顔とあの素の声がさらに抉ってくる。
 
オーバーキルもいいとこで、捨之介を迎え撃った時点ではもうボロボロだった。
 
そこに捨之介さ...
鎧を捨てられないのが弱いとかいつも人の影に隠れているとかってな...
それ言っちゃダメ、言うたらアカンやつやで...
それすら失敗して自分はだめだったんだ、敗北したんだって思ってるとこにそういう正論...死人に鞭打つようなことを...
プライドの殻に立てこもってるような人は、殻を剥がれて中身を人に見せるくらいなら死んだ方がマシなんだよ...ましてや捨之介に。ずっと見下してきて、でもどこかで羨ましかった存在に、何一つ見せられるわけがない。
 
でもそういうの、捨之介は理解できないんだよな。光の主人公だから。
君に救えるのは同じ光のひとだけなんだよ。それが君の闇だよ...
 
落ちる時まであんな、何故だ何故だ、みたいな顔をしてる天魔王が辛すぎて 、あの何も無いところに一人で立ち尽くしてるみたいな顔が焼き付いてしまった。
 
もうこれは個人的な感傷が行き過ぎてるなと思うんですけど、哀れすぎてオペラグラスが涙で死にました。上から目線で哀れだっていうんじゃなくて、それわかるよ...という共感で苦しい。
 
強いと思うんですよ、天魔王は。あんなズタボロになってもプライドを捨てずに、ちゃんと自分で自分の最期を決めるんですよ。
小物のしょーもないプライドだと言われればそうなんですけど、それを最後まで折らずにいることってめちゃくちゃつらい。でもそれをやり遂げる。
 
我ながら偏った見方だなあとは思ったのですが、私にとってはこの回は報われなかった優等生の話でした。
 
 
 
 
あと話が遡りますが、「私のことは何一つ」関連でもう一つ思ったのが、
蘭丸が天魔王を庇ったのはあの言葉があったからなのではないかと。
あの瞬間あの言葉で、蘭丸の中で『天魔王』が初めて像を結び、殿の身代わりとしてではなく天魔王自身を庇ったのではないかと思います。
超解釈気味だなって感じなんですけども。
蘭丸って、天魔王が蘭丸に向けていたあの怨嗟とか渇望みたいなもの、全然わかってなかったんだろうな。これが天魔王片想い感の正体かもしれない。
 (というか捨天蘭の可視範囲の一致しなさが異常)
 
 
それはそうと、今回全体的に思ったのが、捨天蘭が成長してる!ってことです。
演技が、ってこともあると思うけども言いたいのはそうではなくて、三人から受ける内面の印象の年齢が上がってた。
 
前回がほんとの子供!って感じなら、今回は思春期くらい。
天魔王から受けた印象が、愛して、から何故だ、になってたのもそうだし(他責→自責)、蘭丸の最期で特にそう思いました。
 
蘭丸が太夫に撃たれるのって、前回見た時は弱さからの逃げだと思ったけど、今回は蘭丸なりのけじめのように思えた。
自分勝手に殿に殉じることへのけじめと、無界の里を作ってしまったことへのけじめ。
(余談だけど、無界の人を殺したことというより、無界の里を作ったことに罪悪感を持っていそうだった)
捻じれすぎてるし超勝手!って感じですけど、蘭の潔癖さからすれば、まあそうするよなあ...と思います。
 
あと、三人が家族でした。
天魔王が兄、蘭丸が弟、捨之介が年の離れた二人のお兄ちゃん。
この三人って、ほんとはちゃんと家族のような情で繋がってるのではないかと思いました。お互いにうまく大人になれなかっただけで。
家族だから、どれだけ理解できなくても救いようのないやつだと思ってても無反応ではいられないんだなぁと。
 
 
家族ネタでいくと、
天魔王が玉座で女性ばかり侍らせているのも面白いですよね。
たぶん小さい頃に母親がそばにいる環境ではなさそうなので、その代替の役割なのかなと。
でも仮にもそうやって傍に置いていた生駒の最期があれだよ...!!
 
生駒が自分から刺されに行った時、天魔王めちゃくちゃ苦々しい顔しててああもうアーってなりました。
そこで哄笑する彼女のことが理解出来なかったのか、彼女を殺す自分が嫌だったのか。
この天魔王めちゃくちゃ常識人ですよね...。それがまた愛しい。

 
なんか説明不足というか文章意味不明な上に尻切れトンボですが、とりあえずこのへんで切ります。ほんと今回は偏った見方してたなと思うので、次回は落ち着いて観たいです。