オリビエートの坂の上

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髑髏城の七人 Season月 下弦 12/23感想

《本記事はネタバレを含みます》

 

■12/23 ソワレ(下弦三回目)

 
 
はい別物!!!!12/9のとは別物でした!!
たった二週間目を離しただけなのに...下弦ちゃん...
 
前半なんかすごい和やかだな~役者さんも慣れてきたからかな~めっちゃ座組の仲良さそう!とか思ってたら二幕で死にました
 
 
一幕のシーンごとに色々:
 
・冒頭
過去二回は(圧倒されてて)記憶が曖昧なのであれですが、
今日の天魔王様なんか柔らかい?と思いつつ同時に背筋が寒くなって、???と思ってました。
あとから思えばここから違ったのだ...
 
・タイトルのとこ
三途の川に「捨之介だ!」ってあんな色っぽい感じでしたっけ...基本耳が舞台発声よりアニメ発声に慣れてる人間なので完全に惚れてしまったんですけど。
(というかこの回すごく宮野さんっぽくて、それがいいのかわるいのかわからないけど私は好きだった)(ちなみに宮野さんのことをよく知らない人間のボヤキです)
 
・捨天蘭の最初の顔合わせ
天魔王、捨之介のことめっちゃ嫌いそうすぎて!!蘭丸に向けるのとの顔の差な!!(表情の差っていうかもはや顔の差)
蘭丸には優しい...シスコンのおにいちゃんみたいだ...(?)
名前呼ばれて蘭兵衛がぐらっとしたところをみると、信長とおなじトーンの呼び方をしたんだろうなぁ。
 
・兵庫の日替わりくんろ
明日はくんろスマスイブだな!イルミネーション見に行こうぜ太夫!わーっ!(うろ覚え)の後の蘭兵衛のセリフ、廣瀬さんじわじわきてたみたいでちょっと笑い入っちゃっててそれに狸穴さんも釣られてセリフ笑うという和みシーンがありました。客席もつられて笑う。
 
ここまでなんか和やかな舞台だった...なに見に来たんだっけ?ってなってた(フラグ)
 
・霧丸と蘭兵衛
捨之介が霧丸に昔に縛られるな、って言ってるとこだったか、地獄に戻ることはない、だったかのところで蘭兵衛がめっちゃ苦しそうな顔してる...
 そういう蘭兵衛っぽいことするんだよこの蘭兵衛は...
 
・怖い顔してるよ
蘭兵衛と太夫つら つらすぎ度1,000%アップ...
太夫、蘭兵衛に心配させるようなことはしないよって作り笑いされたあと、ああもうダメなんだ引き留められないんだってわかって、霧丸に準備手伝いなさいって言いに行った時はもうほとんど泣いてた...ああ...
このシーン前より甘さ優しさ増量してたと思うので蘭兵衛の罪が深い深い...
 
 
二幕で気づいたこと(今更):
 
・贋鉄斎の蘭丸の呼び方
無界屋襲撃で贋鉄斎、蘭丸のこと蘭丸殿(様?)って呼ぶんですよね!信長の下にいた頃の蘭丸の地位の高さを伺わせるというか、やっぱり客観的にも蘭丸が抜きん出てて天魔王は日陰の身だった感じなのかな。
あと贋鉄斎の他のセリフの口ぶりからしても、蘭丸の方が慕われてた感がある。
 
・おきりの亡骸
狸穴、太夫がこれ以上近づくな!って立ち塞がったラインを、太夫が立ち去ってからも律儀に守ってるんだよなあ...あのシーン、言葉には出てないのに狸穴さんの思いがすごくよくわかってアア...ってなります。
 
 
 
人物ごと:
 
・天魔王
底知れない感が段違い。何が本当で何が嘘かまったくわからない。それを天魔王自身が分かっているのかどうかもわからない。
今までより断然いやらしくてカンに触る嫌な奴。しかもそう思わせるようにわざとやってる(多分)というタチの悪さ。
 
そういう得体の知れなさによるものだと思うのですが、個人的に今までで一番こわかったです。 オペラグラスで表情見てたのですが、手が震えてブレました。
全身がキュッと縮こまってしまって、言い方アレですがチビりそう、という感じ。
あれ前列で直に観てる人大丈夫...?
 
 
蘭兵衛と最初に会った時の感じで、あれっまさかの蘭丸くんだいすき天魔?って思って途中までそう思ってたんですけど、これただの道化的振る舞いで、本当は蘭丸という人間にはなんの興味も執着もない...ね...?
 
というか他人になんの興味も価値も見出してない感じが強かった。生駒の最期には表情は心揺らしてるように見えたけど、あれたぶん何にも思ってないよ。
 
そのくせ蘭丸に庇われた時の顔というか、焦りようは凄かった。信じられないものを見たような、やめろ馬鹿!と言っているようにも見えて、これだけは演技ではないんじゃないかと思い、あれやっぱり大事に思ってるの?ってなったので、結論私が迷子です(天魔王自身、自分でわかってない可能性もある)。
 
この天魔王がなぜこの最期を選んだのかっていうのも闇の中という感じなんだよなぁ。
(余談ですが、下弦天魔王はどの回でも、自らの信念で最期を「選んで」いると思います)
 
自害のシーン、泥臭くてめちゃくちゃ生々しかった。捨之介の手に、自分の肉を抉る感触を、捨之介が今まで見てこなかった地獄を、捨之介の甘さと敗北を、後悔や無力感や絶望を刻みつけるような、執念を感じる手つきだった。
 
今回って、前回前々回と違って「捨之介VS天魔王」の構図がメインの話なのかもしれない。
捨之介が俺には仲間がいる!って言ったところで、はァァァァ!?これだからお前は馬鹿なんだよ!って腹に据えかねた顔してたり、追い詰めながら剣を振り下ろせない捨之介にはらわた煮えくり返ってそうだったりで、この天魔王は蘭丸より捨之介に執着があるように見えました。
 
 
最初は下弦天魔王二人目!!ブルータスお前もか!!って思ったんですが、これアウトプット(強調する面とか表現とか)が変わっていってるだけで根本は同じ天魔王ですね。
冷静で頭が良くて、あらゆる意味で人を動かすことに長けた、常識人の天魔王。 
 
雰囲気だけ見ると今回のバージョンはワカドクロの天魔王に寄った感じがあった気もしたんですけど、このスタンスが見えるのでやっぱ違うものは違うんだなと思いました。
 
でもこれだけのバリエーションの幅を見せられると、器用な天魔王というよりも
鈴木拡樹による鈴木拡樹のためのハイパー鈴木天魔王が観たくなってしまうよね...。
 
 
・蘭兵衛/蘭丸
愛されることに慣れてて、それに疑問を持ったこともないんだなという雰囲気が出てました。特に蘭兵衛でいると、見た目の綺麗さもあってなんとなく少女のイメージ。
でも全体的に自分の意思が出てきていて、最初に観た時のように流されるだけの弱さはあまり感じませんでした。
来い太夫、のとこも、もう腹括ったんだなという語気。所詮外道だ、というセリフにも芯があって、自分に対する嘆きではなく、外道であることを正面切って本質だと認めて立ち塞がった感がある。能動的に苦しんでる感じ、とてもいい。
 
というかシーン前後するんですけど、無界屋襲撃の楽しいなあ!って、戯曲では天魔王に楽しいか?って訊かれて楽しい、って答えることになってるのね...訊かれてない...訊かれてないよ蘭丸...ウウッ...
 
天魔王と蘭丸の関係については、今までとは片想い感が逆に思えました。
蘭丸は天魔王のこと最初から根っこでは人として見てて、昔は頼れる優しいお兄ちゃんだと思ってたのが抜けきっていなさそうな感じ(本当にそんなお兄ちゃんだったかというと微妙ですが)。
一方で天魔王は蘭丸が向けている情のようなものに気づかない、というか一人の人としての蘭丸はどうでもいいと思っていて興味もない。
前回前々回の天魔王は蘭丸自身に執着がありそうだったので、逆だなと。
これは天魔王のアウトプットが変わったことと蘭丸が意志的になったことによる変化かなと思うのですが、この構図も面白いです。
 
 
・捨之介
これは天魔王の嫌いなタイプの捨之介。
(というか捨之介が後述の絶望路線を走るのと、天魔王が捨之介を嫌悪する方向性になるのは表裏一体かと思います)
 
天魔王との対決のとこ、あのハイテンションというか自分に酔ってるの?ってくらいの快活さ、いくら光の主人公だからってあんなのアリか。 
 
それで!!!何が救えると思ったんだよ!!!

THE・捨之介感。
  
まあそれも天魔王が腹に剣グリグリするまでの...話なんですけど......
 
天魔王が落ちた後に自失して動けなくなる、っていうのは、すごく底無しの闇に呑まれてる感じがしました。霧丸に引きずられて、俺が引き付けるって言ったときにもほぼ意識がない状態で立っているように見えて、生気のかけらもなかった。明らかに死の中にいる。
太夫に霧丸の気持ちを無駄にするな、生きなきゃって言われた時も、仲間を生かすためにここは生きて切り抜けなければ、と思ってるだけ。(話がそれますが、この太夫のセリフ、「あんただけでも」生きなきゃ、って言ってるの、捨之介が何を考えてるのかよくわかって言ってるんだなと思う)
そのあとの家康とのシーンでも完全に亡霊。ほとんど喰い殺されかかって首まで差し出したところでまたしても霧丸に救われ、太夫が生きようとする姿も見てようやっと生きる方向に向き始める。
 
このなんの曇りもない光が呪いの傷を受けたみたいな姿、何とも言えず鷲掴みにきます。掴まれました。捨之介はかつての仲間を、まったく捨てるつもりはなかったのにこんな形で失って、信念も信条もがらがらに崩されて、これからどうやって生きていくのか。
霧丸がいなかったらたぶんもう廃人だろうなという気がしました。
 


そう霧丸!!霧丸の存在感めっちゃ大きくなってるし説得力が増してるすごい!!
普通に主役張ってる感がありました。
最初見た時はキャンキャン感情型のキャラ付けなんだなと思ってたんですけど、霧丸がどんと来ると全体の安定感が変わってきますね。
前の霧丸では捨之介を引きずり戻せなかったかもしれない、というとこも含め、霧丸すごい。強いぞ霧丸。
 
話が戻りますが、太夫も、兵庫のプロポーズがなければ皆と別れた後人知れず死んでいたんだろうなと思います。その兵庫も無界屋襲撃では太夫に救われてた訳で、捨之介も霧丸も太夫も兵庫も、この人達はお互いに救いあってようやっと生きてるんだなと。
なんかこういうの、すごくぐっときます。
 
 
 
全体:
 
前々回がほんとの子ども、前回は思春期の子どもの話だと思ったのですが、今回は大人の狂気の話でした。
今まで顕著だった幼児性がなくなったとかではなく、それを自らの一部として内包した大人の彼らの、狂気の話。
 
だんだん深化して複雑に入り組みあって拗れていってる気がするので、どこまで行くのか楽しみすぎてチケット増やさざるをえない。 
 
 
あと、この髑髏城の七人ってメイン3人へのスポットの当たりかた(もしくは観る人のスポットの当て方)で別の話になる演目なんだろうなと思いました。
(個人的には、11/27→天蘭メイン、12/9→天魔王の話、今回12/23→捨vs天)
たぶん三人に同じ量のスポットを当てるとごっちゃごちゃになりそうな気がするので難しい。
 
あーでも蘭丸がメインにバーン!みたいなのも観たいな。
というか、下弦は捨之介と天魔王がめちゃくちゃ顔で喋るのでつい目がそっちにいってしまって、蘭丸中心に観られてないところがあり...私の見方の問題かもしれない。
 


おまけ:
カテコ、宮野捨に合わせて天魔王様がリズムとってダンス(?)してて、かわいすぎて召されました
世界って素晴らしいね...