オリビエートの坂の上

観劇のメモを投げ込む予定です

髑髏城の七人 Season月 下弦 11/27感想

《本記事はネタバレを含みます》
 
自己紹介:
一年前にふらっと2.5次元舞台を見に行って魂抜かれてから、たまに舞台に通っている人間です。
ちなみに魂を抜いたのは鈴木拡樹さんです。
 
 
現況:
なぜか髑髏城に諭吉がガンガン溶けてる...
自分でも何をやっているのかよくわからない
天魔王様の編み込みクソかわ...(現実逃避)
 
 
本題:
11/27ソワレ、
完全初見、事前情報はパンフのあらすじのみ!の状態で行ったのですが、
 
前頭葉をがんがんにシェイクされて昨日までの私は死にました。
観る前の自分は帰り道にそっと小川に流しました。
 
 
ホントすごいエンターテインメントだったんです うわーすごい!!キャー楽しい!!って思ってたら
アーーーーーーーアバババババーーーーー(????)
 
なんか凄すぎて、生まれて初めて死ぬの勿体ないって思ってしまった  こんなおそろしいものを見て今までの自分をぐちゃぐちゃにされることがあるなら、もうそれこそ亡者のように生きていたいと思ってしまった...こわ...
髑髏城が怖いのか役者さんが怖いのかわからない...この舞台こわいぞ...
 
 
女達は別嬪で男達はみんなバカ、っていうセリフありましたが、その通りのお芝居だなと。
特に男性的な幼児性が際立ってる作品だと思いました。それに普通はイラッとかするもんなんですけど、そうじゃないんだよ...アアア......
 
 
【天魔王】
なんか初っ端から大御所っぽい役者さん出てきたな、貫禄〜!(鈴木さんでした)
 
また鈴木さんに魂取られた...ありがとうございます...鈴木さんと鈴木さんのいるこの世界に感謝...
 
これは求心力強いわ、というかめちゃくちゃ狡猾で頭が切れて、2万人集まったのも道理だなと思わせられる堂々として威圧的な天魔王。
 
それだけに、
蘭丸に、殿はお前だけのことを、って叫んだところから鎧を剥がされる流れの衝撃がとんでもなかった。
 
あんなに無敵の支配者オーラ出してたのに、
蘭丸への慟哭は愛して、と子どもが癇癪を起こしてるようにか聞こえなくて。
 
なんでそう聞こえたのか自分でもわからないのですが、ともかくそう思えて盛大に動揺した。
欲しかったのは天じゃないのか...?という。
 
冷徹で策謀に長けて野心があって...という要素が強すぎたために、外だけ成長してしまって中身は幼いままで、歪に成長した子どもみたいだと思いました。
そして鎧を剥がれた姿の寄る辺なさ。
 
なんとなく、この天魔王には孤児のイメージがあります。
 
 
【蘭丸】
色っぽくてたおやかで繊細な優男でした。
蘭丸の弱さというのがすごく伝わって来る感じの佇まい。
 
そう、蘭丸は圧倒的に心が弱い。純粋で素直で受け身。
自分のことしか考えられない視野の狭さ、世界の狭さが幼い子どものよう。
というか、幼いから純粋で素直で弱くて世界が狭いのかもしれない。
 
そしてたぶん、誰かに身を捧げる生き方しか知らない人なんだろうなと思います。
幼い頃から殿のために生きて、それが喜びで人生の全てだったから、自分の足で自分のために人生を生きることを知らなくて、知らないからできるはずもなくて、殿の幻に縋り付いてしまう。
 
とはいえ極楽に撃たれたの人の所業じゃなさすぎ...鬼かよ...自分勝手とかの言葉で済まされないぞ許すまじ...
 
あのシーンの蘭丸の心情は理解出来無さすぎナンバーワンなのですが、
たとえ天魔王が殿ではない偽物だと分かってても庇わずにいられなかったのかなぁ、というのと、一番はもう心底全部終わりにしたい、っていう弱さに起因したものなのかなと。
 
殿が死んでからずっと生きてない状態で生きてきた苦しみとか、その間に犯した罪とか、なにもかも終わりにしたかった、ように見えた。
 
と、つらつら考えてみるものの、
蘭丸はやっぱりどう理解していいのかよく分からなくて。
一つひとつはこうかな、と思ってパーツを集めても一人の人間にはならなくて、これ別の人のパーツ???って思うんですけどそれが目の前に一人の人間として存在してる。
 
理解できないし許されざる人物だけど、無界屋襲撃で楽しい、と言ったこの人がたまらなく魅力的だとも思います。
 
カーテンコールで大夫のエスコートしてるの、残酷な幻すぎて忘れられない。
 
 
【天魔王と蘭丸】
あれだけ緊密な関係でありながら、
お互いに見てるものが違うというか、向かい合って目を合わせていてもお互いを全く見てないのが最高にシャブい...シャブすぎる...
 
口移しのシーン、あまりにおそろしくて時が止まったんですけど...そしてまだ止まったままなんですけど...
 
あんな弱くて柔くて醜くて美しいものある...??あんな苦悩の果てで喉掻きむしりながら傷口抉って出てくる悦楽に縋ってだんだん悦楽そのものが悦楽になってでも苦悩は膨張するばかりでまた抉ってみたいな...(観劇直後の頭のいかれたメモから引用)
 
この二人はお互いを利用している、だけでは説明がつかないある種の連帯感があって、ラベルをつけるなら共犯者、かなと思うんですけど、
二人の間に温度差はあるにせよ、外道にしかなれない人間の業で繋がっている気がします。それがまあ緊密で、呪いみたいに甘い。
 
にも関わらず、蘭丸は天魔王を殿の幻としてしか見てないし、天魔王は蘭丸を自分に欠けてるものを(擬似的に)満たす存在としてだけ見ていて、お互い自身のことは目に映ってない。
 
語弊があることを承知で極端な言い方をすると、このふたりは信長の幻をあいだに挟んで愛し合ってるのかもなぁと。それって愛し合うこととは全然まったく別物なんだけども。
 
美しくて強い大の男が二人揃って、というか二人揃ったからそんな正気じゃないことをしていて、その底に見えるのは不安定で頼りない子どもの姿で。
 
私の前頭葉をぐちゃぐちゃに掻き混ぜたのはこれです...。神経を直接触られるような感覚で、言葉を飾らずに言うなら、どエロい。
 
 
【捨之介】
明るくまっすぐなまさしく主人公!
陽の光じゃ...まぶしい...あったけぇ...
 
でもこれ捨之介最後までなんにも捨てられてないじゃん...?捨てられない男が全部背負っていく話じゃないですか...このお日様め...うおぉ...
 
この人の幼児性は、根っからの善人思考、善は正義、と信じてるところですね。主人公的な甘ちゃんタイプというか。
殺すんじゃない止めるんだ!(マジか!)
 
この人が完全光属性だから、余計に天魔王と蘭丸の闇がくっきりしてある意味残酷。
 
光と闇の断絶は、この舞台ではかなり厳然としていると思います。
捨之介を筆頭に、霧丸や兵庫も闇側の思考にまったく想像が及ばないキャラ。
反して、闇側はたぶん光側のことを眩しく思ったり、ひょっとしたらそういうふうにも生きられたかもと思ったりすることもある(蘭丸はもとより、あの天魔王であれば頭に過ぎったことがある気がする)。
 
でもできない。
 
だって闇だから。
 
そこにはどう足掻いても超えられない断絶がある。
 
だから蘭丸も天魔王も死ぬんだよ捨之介...。
 
 
捨之介が天魔の鎧を剥がしていって生身の人間に戻す、というのも容赦ない表現だなと思いました。
天魔王の小さな体が出てきたとき、正直もうやめてあげてって思ってしまったよね...
光のヒーローである捨之助には、天魔王がなぜ死んだのかきっと分からんのだろうな...
 
 
天魔王が死ぬ、と書きましたが、死んだというより夢の中に取り残されたままでいるイメージが強いです。
信長と共にいた頃が夢なら、捨之介は自ら夢の世界を捨てて目を覚まし、蘭丸は夢の中で自分を終わらせて夢から消えて。天魔王だけ、そこが夢だということも分からずにいるような。
 
 
 
本気で長くなるので割愛しますが、ほかのキャラもとてもよかった...。
極楽太夫は特に印象的でした。キャピっとして可愛いのに、地獄を見てきた重みや包容力があって、でもやっぱりひとりの女で。
 
 
これまだ公演期間序盤なので、今後何十もの公演を経て彼らがどこに辿り着くか楽しみすぎて頭が破裂します。
一公演で満足していた頃にはもう戻れないのだ...
 
 
→12/9に2回目観たのですが、めちゃくちゃ書き悩んでいるのでまたそのうち。