オリビエートの坂の上

観劇のメモを投げ込む予定です

祝劇場特別版!!カフカの東京絶望日記みてきたよ

 

2/28(土) 祝劇場特別版!!カフカの東京絶望日記みてきたよ

 

 
ほんとは来週にでも用事のついでに見に行こうと思ってたんですが、なんか日本とかいう国が猛スピードで坂の下までローリングしてるので初日朝イチに飛び込んできました。まあなんか勢いとか大事かなと思って、これも公開初日に上げています。

 

観ながら考えてたこと

 

中身は放送済み回+αなんですが、改めて見ると最初に見た時と違うことを思ったりするし、この世界のシュールさはやっぱりたまらなくツボだなと思いました。あの無言の間とか、フェードアウトの使い方とタイミングとか、とても好きです。映画館で近くに座ってた方から、小声の笑い声が随所で聞こえたのもなんか嬉しかったです。ひとりでテレビ見てるときには味わえない楽しさですね。

 

エピソードはネコチャン回はじまりです。上映会で初めて観たときからKatzeが超ツボだったんですが、ツボる私健在。唐突に口から出るカッツェ、何回見ても吹き出してしまいます。あのマイセンのミルヒ皿はもともと家にカッツェ用の皿があったわけではないはずなので、カフカがカレーかシチューか何かしらの種を食べるのに使っている皿なんでしょうか。猫が割と腕の中から逃げようとしてるのも何回みても面白すぎるし、人間を飼っているつぐみちゃんのテンションが大好きです。

 

承認欲求の回は、たしかにイイネのカウントが回るのは嬉しいことだけど、自分が自分を良しとしてないといくらハートの数稼いでも虚しいものでもあるよなとしみじみ。結局自分で自分を良しとできないとハッピーになりようがないですからね、根本の話をすると。ただ承認欲求自体は、はるか昔マズローの時代から人間の性質として挙げられているものなので、食欲とかとおなじく欲求としてあって当たり前のものです。忌避もせず溺れもせず、自然に付き合えるといいですよね。

 

キャンプ回は、登場人物たちの価値観スタンスが顕著に出ていて救われる回です。未婚シングルマザー、女装するおじさん、とつぜん叫び出して森に消えていく人、自殺しようとしてる若者と、これ以上ないほどの異端のオンパレード。登場人物みんなお互いに素直にやさしくて、ちょっと泣きそうになります。私は大事な人たちに、こうやって接することができているんだろうかな、と思ったりしました。あと映画館の音響だと、カフカが森にウワアアアアアアアアーーーーーーーって入っていく叫び声がめっちゃ響いて最高。

 

婚活回は、断れないカフカの顔がすごい共感してしまって笑います。といいつつ私はスパっと断る方なんですけど、心の中ではあんな感じの顔してますね。性別にかかわらず、結婚に夢見るっていうのはこのご時世では鼻で笑われたりするのかもしれないけど、素敵なことだと思います。パートナーがいる人生って、きっとかけがえのないものなんだと思うので。

 

地下アイドル回は、俗にいうワカテハイユーが客の立場を演じるという、メタいシュールさがありました。ビジネス手法がエンタメというより水商売に傾いてるのは女性アイドルだけでなく、男性アイドル・若俳界隈もおなじですからね。もちろん人によって程度の大小はありますが。少なくとも客の私たちは、仮にもその界隈に属する誰かを「推し」とか呼んでいるのなら、その構造に異を唱えるべきだと思うんですけど皆さんの認識はどうなんでしょう。なお私は水商売という業態を否定しているわけではなく、アイドルや俳優の看板掲げてそれをやるなよと思ってるだけです。

 

最後の変身回は、ポジティブ☆カフカの爆裂っぷりと親子というものの難しさとで笑ったり考えさせられたりの回でした。スキップしてる鈴木さん面白すぎるし、親の呪いってどうしたらいいんですかね。人は皆すべからく親から生まれてくるので、生まれた時点である種呪われているわけですが。親っていっても遺伝子上のつながりがあるだけのただの人間なんですけど、それで割り切れないとこともありますし。ひとりの自立した個でいるっていうのは、親にとっても子にとっても案外難しいことなのかもしれません。あとあの流れで終わったのでブロート氏とケンカ別れしちゃってるのさみしいな~。一話の冒頭でドヤ顔ぶっこまれた時からブロート氏のことが大好きなので、ぜひ仲直りしてるとこが見たいです。

 

こうして振り返ってみると、どのエピソードも独特ですね。青空って青いね、みたいなことを言いますけど。でも総じて私にとってこの作品は、すごくやわらかくてやさしいものだったなあと思います。

多様性のスタンスが近未来SFだった、という話は別記事ですでに書いたんですけども、今日改めて観ていて、人のことをどうこういう前に自分のことをまず認めないとな、そこからだな、と思いました。他の人のあり方をそのまま受け止めるのと同様、自分にもそうしてあげないといけないなと。私も全然中央値の人間ではなくて(まあ完全に中央値の人間なんていないですが)、皆はできてるのに私はできないってことがたくさんあって、本当ならそれはそれっていうだけの話なんですけど、やたら自分を責めたりしていて。そんな人間が他人に対して「君は君のままが一番オッケー!」って言っても説得力なさすぎなんですよね。それほんとにそう思ってんのか、いい子ちゃんのおためごかしじゃん、という。

エンドロールの後の、「僕は明日に向かって歩くことはできない、躓くことすらできない、できるのは倒れることだけ」っていうシーン、とても好きです(セリフはニュアンスなんで間違ってたらすいません)。とりあえず私も倒れるだけの人間だと受け止めよう、と思えました。
またその倒れてる鈴木さんの美しいこと。この謎の美しさもあいまって、なんかそれはそれで良さそうだなって、あまり構えずにいよう、みたいな気持ちになれました。

 

  

パンフがめちゃくちゃ良かった話


パンフに力入っててびっくり。普通にドラマの静止画切り貼りして終わりだと思ってました。それがまさかの取りおろし!!!!インタビュー込み8P!!!!私は映画館で何を買ったんだ??最高の雑誌??パンフの企画の方、ありがとうございます。写真はそれこそ雑誌の特集とかいろいろなところで見る機会はありますけど、ベストオブ好きな写真のひとつになりました。鈴木さんグレープアイス色似合いますね!!雨が降っている情景も、湿ったちょっと冷たい空気が漂ってくるようでとても素敵です。
そして最初と最後の見開きの場面写真の鈴木さんの美しさ。この誌面作った人、鈴木さんのこときれいだなって思ってるのがわかります(?)。ほんとにこの、静かな滝みたいな不思議なきれいさはなんなんでしょうね。

 

あと頭木さんとアサダさんのクロストークも読めて良かったなあと思いました。つぐみちゃんのお笑い回は視聴者が女性メインなので特に入れてくださったのかなとも思うんですけど、あの回はTwitterでも反響が大きかった気がします。女性にとってあの手の絶望はルーチンワークとも言えるもので珍しいことではなく、でも少なくともこれを作った人はそういう絶望がこの世に存在することをわかってくれてるんだなって思って、とてもじーんとした覚えがあります。

つぐみちゃんの絶望絶叫に客が誰もリアクションもしないのも、現状こうですよねっていう綺麗ごとじゃなさがあって誠実だなと思いました。そしてカフカがひとりで拍手をするのは救いで、でもやっぱり他にはだーれも追随してすら拍手しなくて。私は似たようなことがあったら空気読まずに拍手したいし、できれば頑張ってつぐみちゃんみたいに叫んでもみたいなと思いました。黙ってるとその場はいいかもしれないんですけど、というか黙らないと不利益被ることも多いんですけど、なんかすり減るんですよね、自分の尊厳とか存在が。現時点ではすり減ってるだけなんで、絶叫するのは今後の目標です。
そして逆に自分が強者側に立った時は、あのクソダサ先輩芸人と同じようにならないようにしたいし、少なくとも指摘されたらちゃんと気づいて恥じて改められる人間でいたいなと思います。

 

話が横道に逸れましたが、最後に頭木さんがおっしゃっている「ネガティブでもいい」の話のくだりにはハッとしました。確かにその通りで、多様性が大事だなんだといいながら無意識に「これがいい、こうあるべき」基準を自分の中で作ってしまってるなと思います。それに、その「でも」って、二重に私たちの首を絞めるんですよね。ポジティブではないことに対する自己嫌悪と、ネガティブでもいいとすら思いきれないときのさらなる自己嫌悪、みたいな。良いとか悪いとかの概念から離れて、単にネガティブです、っていうそれだけでいいんだよなあ。

 

 

ということで、とりとめがないですが初日みてきたよ!というご報告と感想のメモでした。
せっかくなので、テレビで観たことない人もたくさん観てくださるといいなと思います。このシュールさをいろんな人と共有したいし、キャストのファンだけが観るというのではもったい作品だなと思うので。そしてぜひ、またいつかカフカさんに会いたいなあ。